数秒や数十秒の周期でゆったりと揺れる地震の揺れ。一般家屋には揺れをあまり感じなかったり建物への被害が出なかったりしますが、長い周期と合致する大きな建造物へは致命的なダメージを与える可能性があります。

厄介な事に長周期地震動は遠方(地盤の質によっても数百キロメートル届く場合がある)まで届く上に、震度3程度でも高層階に住む人は酔うような揺れを暫く受けます。2003年の十勝沖地震では長周期地震動によって、苫小牧市の石油コンビナートで火災、2004年新潟県中越地震でも同じく長周期地震動によって震度3だったにも関わらず港区の六本木ヒルズでエレベーター6基が損傷しました。

構造物には高さや規模などによって「固有の周期」を持っており、地震などの揺れの周期と合致すると共振を起こして想像以上に大きく揺れます。長周期地震動一般家屋(木造二階建てとか)にダメージがほとんど無いのは、共振する周期がなかったためです。

例えば浴室の湯船に水を半分くらい入れます。手で左右に細かくバシャバシャと水中を揺らしても外へ水が出たりはしませんが、幅を変えていくと半分しか入ってなかった水面の高さが2倍ぐらいになり風呂桶から溢れる「うねり」へと大きく変化します。少し原理は違うかもしれませんが、イメージ的には似たような感じで被害が出ます。

大きな建造物が長周期地震動の影響をうけて揺れ出すと、なかなか揺れが収まりません。高層階では振り子のように振れ幅も拡大することがあるので、特に重い家具などはしっかりと固定する必要があります。長周期地震動に対しては多くの建築物で想定外の被害(※あまり知られていなかった)とされており、現在は対策が進んでいません。高層マンションから共振自体をなくす事は出来ませんが、建物内部や基礎部分に地震動を弱めたり、打ち消すような方法で対策が考えられています。

1979年に竣工した新宿センタービルは地上55階建て。阪神大震災以後の2008~2009年に長周期地震動対策として、揺れを減衰する仕組みをもったダンパーを288基取り付けました。その結果、東日本大震災発生時の揺れを22%制震化に成功したとのことでした。

見逃せないポイントとして、制震化に成功したのもそうですが、対策費用に20億円かかったというもの。長周期地震動に対応するための制震化ダンパーは各フロアーへの設置個数が多いほど効果が高いそうですが、やはり費用対効果という面で今回の設置台数への着地となったとのこと。